2021年9月14日火曜日

今の水道事業の欠点は?(改善されるべきポイント)

今回は日本の公共水道の3つの欠点について記載します。

「水道民営化で問題解決!」と言う賛成派も居ますが、公共のままでも解決が可能な事柄が多いです。議論するためにも、欠点を良く理解しましょう。

1)小規模水道事業は低効率で高料金
2)費用・効果が最適化されていない(過剰投資?)
3)安全性に関する情報不足


1)小規模水道事業は低効率で高料金

水道事業年鑑(令和元年)によると、水道事業は1,856 事業(上水道事業1,321+簡易水道事業535)あります。日本では市町村ごとに水道事業が実施されてきた歴史があり、合計市町村数1,718(2021/9時点、総務省)とおおよそ一致します。

事業数が多いことは、小規模が事業体が多いことを示しています。小規模事業は事業の効率性が低いことが分かっており、解決には他の事業と統合される広域化が必要です。


2)費用・効果が最適化されていない(過剰投資?)

国内の水道は高い技術力を誇りますが、効果と費用が最適化されているかどうか疑問が残ります。日本の水道は低い漏水率が特に有名であり、令和元年の東京都水道局は有収率95.8%(資料)です。これは漏水などで無駄になる量が、浄化された水量のわずか4.2%という意味であり、世界的に高い水準ですが、その分費用がかかっています。比較として、イギリスでは漏水率は15~20%程度と漏水が多いものの、配管への投資は低く抑えられています。

どこまで投資・サービス改善するかの判断は難しいですが、国内の水道財政は悪化が見込まれており、費用と効果のバランスを再検討することが重要だと思います。


3)安全性に関する情報不足

国内の水道事業でこれから重要視されるのは、安全性だと思います。全国で水害や地震などの被害が増えており、天災時でも高い安定性の確保が期待されています。また安全性への懸念が、水道民営化に反対する主な理由の1つとなっています。

現在、水道事業者の提供する安全性に関する情報が少なく感じます。このため、求める安全性の水準と、かかる費用の関係が分かりません。公または民間企業の運営の、どちらが安全性を向上できるのかといった比較も難しいです。このため、安全性に関する充分な情報開示と、利用者へのよりわかりやすい説明が求められます。




2021年9月9日木曜日

規制機関の設立レベル(国レベルの管理が必要?)

今回は、水道コンセッションの規制機関(Regulator)について記載します。

規制機関はコンセッション期間中、民間企業から得た情報を分析し、利益追求に向かいやすい企業の運営を管理・規制する役割を持ちます。

・規制機関の設立レベル

規制機関の設立レベルですが、国レベル、州・県レベル、市レベルと各国で異なっています(例は以下)。

国や州レベルの方が当然情報量が多く、専門担当者も多く雇用できると考えられます。日本は、発注者である県・市が個別に規制をする方針の様ですが、その体制で海戦山戦の水メジャーや日本の大企業と、対等に戦えるか疑問が残ります。

コンセッションを適切に管理するためには、国レベルの規制機関が必要との意見もあり、今後議論していく価値があると思います。


国レベルイギリス、ポルトガル、チリ、ボリビア

1つの規制機関が全国を一括して管理する。完全民営化のイギリスが代表で、全国の事業から一律の手数料をとって運営費としていることが多い。

県・州レベルメリカ、インド、ブラジル

州・県の自治レベルが高い国では州・県ごとに規制機関が設立される。道路等、他インフラ分野も併せて規制する場合が多い。

市レベルフランス、フィリピン、インドネシア、(日本)

昔からコンセッションを実施してきたフランスは市ごとに管理。最近民営化が進められた国も事業数が少なく、市レベルの管理が多い。自治体が中小規模の場合、充分な体制(組織・予算)が取れるか懸念あり。