2021年6月14日月曜日

過去のPFI事業に対する会計検査院の調査結果(令和3年5月)

先月会計検査院より、過去に国が実施したPFI事業に関する調査結果が公表されました(詳細)。「公的運営の方が得だったかも」、「契約不履行が多く発生したがうまく解決できなかった」といった事例も紹介され、貴重な調査結果でしたので、その内容を整理します。

1.調査対象

調査の対象は、国(省庁)が2002~2018年(平成14~30)に実施したPFI全76事業。県や市等が実施している700件以上のPFI事業は調査対象に含まれていません。(2020年3月時点のPFI事業数は計818件、うち国事業は77件)

76件の内訳ですが、宿舎・庁舎の整備が各26件、22件で全体の6割を占めます。また、コンセッション契約などの様に民間が収入を得てそれで運営する「独立採算型」は11件(14%)で、残りは「サービス購入型」の65件(86%)。「独立採算型」の分野は、空港5件、公園3件、駐車場2件、教育文化施設1軒でした。


2.調査結果

報告された結果結果は以下の通りでした。

①VFMの計算方法がPFI実施に有利な数値となっていた。知識が無いと理解が難しいですが、具体的には、「1)割引率が過去の国債金利等と比べて高い」、「2)競争入札で得られる効果が加味されていない」の2点。これらを修正して再計算すると、76件中6~7件は評価が逆転し、VFMがマイナス(民間運営だと損)となった。

②「独立採算型(11件)」でも数件の失敗事例が発生。東京国際空港国際線貨物ターミナル事業で100億円を超える債務超過。八王子市八日町駐車場は収入が想定を下回り、施設の修繕が進まず4割程度の設備が使えない状況となった。

③「サービス購入型(65件)」のモニタリング結果によると、26事業で合計2,367件の契約条件不履行(債務不履行)が発生。7事業が特に債務不履行が多く2,264件あり、そのうち3事業のみに罰則が適用され報酬が減額された(計7,600万円)。

※その他、費用・収入についても評価されていましたが、判断が難しく省略






3.個人的な意見

個人的な意見としては、以下のとおりです。

・VFMの計算は、PFI実施ありきで計算するため、VFMが大きくなる前提条件を使いがちになります。水道コンセッション事業の検討時において、分析方法の偏りを防ぐため、VFM算出の詳細を開示して慎重に評価・分析することが大事です。

・「独立採算型」事業11件中2件では財務悪化により投資不足の懸念が生じています。また「サービス購入型」事業の契約条件不履行2,367件という数字は契約違反の日常化を示します。水道コンセッションの運営は今までのPFI事業に比べてより複雑長期間・配管投資が必要)であり、同様に投資不足・契約条件不履行が発生すると思われます。このため、規制・管理するための充分な仕組み・体制づくりが大切です。

・今回、PFI事業が厳しく評価されたことは貴重ですが、2002年の開始後、20年も必要だったのでしょうか。今後、いくつもの水道コンセッション事業が実施された際、その実施状況をより短中期(5~10年)で批判的にモニタリングする専門機関が必要ではないでしょうか。







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