2021年6月21日月曜日

1. 婚活期間(水道コンセッション事業の事業形成から契約まで)

結婚という社会的な仕組みに置き換えて、水道コンセッション契約を説明する試みですが、ここでは相手募集から婚約まで(事業形成から契約まで)を説明してみます。

性別は、仮に女性=公的機関男性=民間企業、出会う方法は費用のかかる結婚紹介所とします。婚約または契約までの手順、期間、費用は、以下のとおりです。




A:紹介所婚活の場合

手順:1)結婚相手募集→2)結婚生活の条件提示→3)相手の意見を反映→4)結婚相手選定→5)親族への紹介
期間・費用:大手結婚紹介会社IBJ社の費用を見たところ、2年程活動した場合、計100万円程かかる様でした。(入会22万円+活動費1.7万円/月+成婚料22万円+イベント参加・諸経費)

B:水道コンセッションの場合(厚労省資料、12ページの一部)

手順:1)調査結果の公表→2) 実施方針・募集要項等公表→3)競争的対話→4)優先交渉権者の選定→5)議会の承認
期間・費用:PFI法の規定に基づいた手続きが必要であり、事業確認の調査から契約まで、3~5年はかかる様です。費用も総額で数千~数億円といった規模に達します。

例として、宮城県の水道コンセッションでは、事前調査と契約までの業務支援に4億円以上の費用がかかっています。

・導入可能性調査(総研)4,320万円(2018年7月に調査結果公表)
・デューデリ調査(監査法人)6,813万円(2018年7月に調査結果公表)
・事業実施の支援業務(監査法人)2億9,900万円(2019年2月に発注、業務中)










(1)結婚相手募集(調査結果の公表)

女性がまじめな結婚を目指し、結婚紹介所に登録します。はじめに自己分析や自己紹介が必要となり、婚活アドバイザーの意見に従って、プロカメラマンに依頼して清楚な服装で紹介写真を撮り、趣味、学歴、長所、相手のタイプなどを記載して、魅力をアピールします。

水道コンセッション事業の場合でも、県や市の契約相手となる民間企業に事業の存在と魅力を伝える必要が有ります。まず事業の内容を調査し、事業の方針、収益性、リスクなどを開示します。分析・評価に技術・財務・法務の専門知識が必要なので、県や市から、数千万円の費用でコンサルタントや監査法人に発注されます。

(2)結婚生活の条件提示(実施方針・募集要項等公表)

自己紹介を実施し、興味を持った男性から連絡がありました。お見合いやデート、メールのやりとりを通して、「どういった結婚生活を求めているのか」を詳しく伝える必要が有ります。明確にする内容は、以下でしょうか。
・将来のスケジュール(結婚時期、出産・子育て、引退・老後)
・2人の役割分担・ルール(家事の割振、居住環境、旅行回数、同居家族、喧嘩の解決方法)
・家計の管理方法(専業主婦/共働き、想定年収、家計の管理方法、費用の分担)

水道コンセッションの契約開始から終了までの条件を、事業工程表、契約書案、選定基準などを公表資料で開示します。各書類について、応札企業者から質問を受け、回答・説明を実施します。
・事業スケジュール(契約期間・年数、投資目標、終了時期、契約延長条件)
・契約内容の明確化(官民の役割分担、実施対象地域・施設、報酬/罰則規定)
・収入・支出の条件(料金表・改定方法、料金徴収方法、負担費用の割振)

(3)意見を汲んで計画修正(競争的対話)

相手に理想の結婚生活は説明できましたが、高望みばかりすると婚期を逃します。逆に安売りして条件の悪い男につかまると、後から後悔します。また「海外赴任についてこない?」
など、思いつかない提案があるかもしれません。このため、候補者や相談所アドバイザー、友人などに意見を聞き、魅力的な女性は強気に(そうでない女性はそれなりに)結婚生活の希望条件を修正します。

海外のPPP事業(PFI・コンセッション等)で、契約条件が厳しすぎて1社も応札しないとか、逆に企業が儲けすぎて後から住民から非難される事例が頻出しました。発注者の思いつかない革新的な改善方法も提案されるかもしれません。このため、多くの国で発注者と応札者が正式な入札前に意見交換し、契約条件を適正化(強化/緩和)することが必須化されています。日本のPFI法で「競争的対話」と呼ばれる手続きであり、応札者の意見を参考に契約案や選定基準等が修正されます。



(4)結婚相手の選定(優先交渉権者の選定)

何人かの男性からプロポーズされ、女性はその中から1人を選定します。完璧な男性は存在しないので、何を優先するか決め、それに沿って評価しましょう。長い時間一緒に過ごすことになるので、年収よりも一緒にいて楽しい、思いやりがあって逆境に強い、といった長所を評価するべきかもしれません。

水道コンセッションでは、競争環境が保持され、複数の企業グループが事業に応札します。各グループは水道料金の他、投資計画、将来目標、財務計算書などを提出します。この内容を読み込み、様々な視点(技術、財務、安全性)で審査し、最も優れた提案書を出した企業グループを選定し、契約に進みます。

2020年に開示された宮城県の選定基準は、200点中技術評価160点、財務評価40点とされました。技術評価は実施方針、実施体制、運転管理、モニタリング、危機管理など10項目の基準で採点されました。結果として、応札した3グループ中1グループが失格、残り2グループからメタウォーターグループが選定されました(参考資料)。

(5)親族への紹介(議会の承認)

結婚すると家族通しの付き合いとなるので、良い相手を見つけることができたら、両親や親族に正式に紹介し、結婚の了承を得ます。

水道コンセッション契約には、県や市の議会に説明し、運営権設定(コンセッション事業)の承認を受ける必要があります。


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