2021年2月22日月曜日

(4)水道事業の収入

ここでは水道事業の収入について説明します。
水道事業の主な収入は水道料金であり、その料金体系と、料金改定の仕組みを説明します。

1)料金体系

ここでは、一般的な水道料金体系を説明します。説明する内容は以下のとおりです。
a. 水道事業は独立採算のため安定した経営となっている
b. 料金は基本料金と従量料金からなる
c. 大消費者から小消費者(一般家庭)への補助が存在する
d. 住む町によって水道料金に差がある(国内で最大8倍)


a. 水道事業は独立採算制がとられ、経営は安定(外部からの補助金なし)

まず水道事業は地方公営企業法が適用され、基本的に独立採算となります。つまり、集めた料金収入で事業にかかる全ての建設費や維持管理費を賄っているということですね(総括原価方式と呼ばれます)。

簡単に書くと、毎年水道事業に1000億円かかり、5億㎥の水を販売している自治体がある場合、平均単価が200円/㎥なので、これと同じ収入となる料金水準(平均200円/㎥)を設定することになります。(実際は複数年での計算ですが)

各水道サービスの財務データは、総務省の以下サイトに掲示されており参考になります。

総務省地方公営企業年間(水道以外の分野も含みます)


b. 水道料金は基本料金と従量料金(逓増性)での計算が一般的

水道の料金体系ですが、東京都を例に説明してみますので以下リンクを確認してください。(下水道料金も一緒に徴収されますが、ここでは水道料金についてのみ説明)

料金は固定費の「基本料金」と、使用量によって変わる「従量料金」に分かれています。どちらも一般家庭を含む小消費者で安く、大消費者でより高く設定されています。

「基本料金」は固定費で、呼び径(各家への接続管の太さ)で費用が変わります。一般的な家庭では毎月1170円(呼び径20mm)かかります。

それに加え、「従量料金」として、0円/㎥から404円/㎥まで、使用量が増えるにつれてブロック毎に料金が上がります。この単価が上がっていく仕組みは、逓増(ていぞう)料金制と呼び、大消費者に節水を促す効果があります。

この表だけでは分かりづらいため、1~6人の家庭での水道料金と単価を計算してみました。(各世帯の水使用量は平成24年のデータを引用)

図 月当たりの水道料金と単価(東京都23区の一般家庭)図をクリックで拡大

計算により、各世帯の水道料金と単価は、以下のとおりとなりました。   
世帯人数    消費量    水道料金    単価
  • 1人    8㎥/月    1,236円/月    155円/㎥
  • 2人 16㎥/月    2,048円/月    128円/㎥
  • 3人 21㎥/月 2,723円/月    130円/㎥
  • 4人 25㎥/月 3,375円/月    135円/㎥
  • 5人 30㎥/月 4,190円/月    140円/㎥
  • 6人 34㎥/月 4,998円/月    147円/㎥
水道料金の単価ですが、普通の家庭であれば、おおよそ128-155円/㎥のレンジと判明しました(2021年2月時点)。面白いことに、1人世帯の単価(155円/㎥)が一番高くなり、2人世帯の単価(128円/㎥)が一番安くなりました。大した事無い金額ですが、同棲すると少し水道代が節約できるということですね。


c. 大消費者が家庭利用の費用を一部肩代わり(内部補助あり)

あまり知られていませんが、多くの国の水道事業で、工業・産業利用などの大消費者が、小消費者(家庭)の費用を一部負担しています。

日本でも、消費が大きいほど料金単価が高くなる逓増性の影響で、同様の状況となっています(例:201㎥/月以上で372円/㎥など)。

2020年の資料を見ると、東京都水道局の販売単価(総収入/総販売水量)はおよそ211円/㎥となっています。上の一般家庭の単価(128-155円/㎥)との差額である56-83円/㎥程度は大口消費者が肩代わりしていることになります(その他収入などは無視した場合)。


d. 各自治体で料金が異なり、格差がある(最大8倍)

a.で説明したとおり、水道事業は黒字になるように料金設定されます。ただ、これらの水道事業は普通各自治体で実施されており、それぞれの地域特性(水源、人口密集度など)により事業の経済性が異なるため、水道料金単価に差が発生します。月消費20㎥の条件で比べた場合、その差は8倍にもなるそうで(平成27年情報)、この改善を求める声もあります。

最大8倍も? 「水道料金」に地域差がある理由を日本水道協会に聞いてみた

「水道料金」ランキング1263事業体・完全版(ダイヤモンド)


2)料金改定の仕組み

水道料金ですが、一定期間ごとの見直しが行われます。見直し期間の目安ですが、厚生省の各種資料によると、3-5年ごとの料金改定を勧めている様です。

料金改定の際、今後の消費量、施設建設計画・費用、更新計画・費用などを再計算し、必要なレベルの料金水準が設定されています。


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