2021年2月18日木曜日

(1)水道事業の特徴、他の公共サービスとの違い

水道事業のコンセッションは、他分野と比較して失敗例が多いとされています。

その理由を知るために、水道事業の特徴・特殊性を以下3点に整理しました。

1.水は生活必需品
2.どの都市にも既に水道が存在する(既存施設を利用した事業となる)
3.配管の費用が高い(輸送費が高い)


1.水は生活必需品

安全な水が無いと人は1週間も生きることができません。このため水を利用することは人々の基本的な権利とされています。災害で電気やガスが無ければ不便ですが、命の危険は感じませんので、それらと比べても水道は非常に大切です。

このため、水道事業を民営化などで営利目的に利用されたり、過度に高額な料金を徴収されることに対する住民の反対は、他のインフラ事業と比べて強くなります。


2. どの都市にも既に水道が存在する(既存施設を活用した事業となる)

高速道路、都市鉄道、廃棄物処理、図書館など、色々な分野のPPP(官民連携)事業が実施されていますが、これらは新規施設が建設され、運営されることが普通です(専門的には"Green Field"事業と呼ばれる)。一方、水道事業は生活必需品なので、既にどの都市にも存在します。既にある水道事業を引き継いで、民営化・コンセッション契約とすることは、新規事業と比べるとリスクが高いです。(既存事業のPPPは、専門的には"Brown Field"事業と呼ばれる)

Brown Field事業が難しい理由ですが、中古マンションや中古車両を売買する場合と同じく、過去に建設された資産(浄水場、配管)を引き継ぐ場合、施設に不具合が生じるリスクがあります。また、昔から水道公社に勤務している方々の処遇も変わることになり、その処遇問題も発生します。


3.配管の費用が高い(輸送費が高い)

一般家庭には電気、携帯電話、水道といった様々な公共サービスが提供されていますが、これらと比べ、水道事業は原料費が安く輸送費が高いビジネスです。

水道事業の輸送費の主な費目は、配管施設の建設費です。水道施設は様々な施設で構成されますが、全体の建設費のうち、配管施設の建設費が占める割合が最も多く、約6割に達します。

水道は地下に敷設される配管を通して輸送され、配管敷設工事は道路掘削・舗装作業が必要であり、また30-40年経って老朽化したら更新も必要となり、これらが高い費用の理由です。

輸送費が高いと、25-30年にも及ぶコンセッション事業運営期間の支出管理が難しくなります。これが、他インフラ分野と比べて水道コンセッションの失敗が多い理由の一つとされています。
(輸送をイメージしています)

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