2021年8月11日水曜日

3.離婚する?しない?(水道コンセッション事業の失敗)

コンセッション事業を結婚生活になぞらえて説明する試みですが、今回3つ目の記事となりました。「1.婚活期間(事業形成から契約まで)」の記事で、お見合い・婚約手続きを説明しました。続く「2.夢見た結婚生活(コンセッション事業の運営)」では、結婚生活でのルール・情報共有などを説明しました。

「1.」「2.」に成功し、思い描いた結婚生活が送れれば最高です。しかし今回は、結婚相手が家事をしてくれないとか、浮気が発覚するなど、結婚制度(コンセッション事業)がうまく行かない場合を説明したいと思います。




・微細なルール違反(業務改善要求)

結婚生活のルールが有りますが、約束していた家事をさぼるとか、子供の面倒を見ずに遊びに行ってしまうなど、相手が約束違反をすることが有ります。これらの違反が加速したり継続した場合、相手に指摘して行動を改善してもらう必要があります。

水道コンセッションでは、日常的な運用指標(水量、水質、水圧等)や、定期的に計測する技術指標(漏水量、施設更新数等)が定められています。また、事故や災害時の断水時間等も記録されます。これらの指標が満たされない場合、公共機関は民間企業に警告を発し、企業は真摯に対応(改善計画提出、行動是正等)する必要があります。警告しても業務が改善されなかった場合、契約に従って罰金を課したり、公共が介入し対策費用をを民間に負わせることになります。

(参考)(5)水道事業の成果

・致命的なルール違反(早期契約解除)

浮気など、結婚生活で重大な違反があった場合、正式に離婚をし、民法に従って違反を犯した側から慰謝料を取ることも可能です。

水道コンセッションでは、契約の早期終了条件が設定されています。運営に重要な瑕疵が発生したり、コンセッションフィーが支払われない場合(民間側の違反)、公共が契約終了を申し出ます。一方、公共が保証すると決まっていた法的リスクが発現したり、政治的に契約が破棄された場合(公共側の違反)、民間が終了を申し出ます。どちらの場合も、契約違反した側が費用を支払う義務があります。政治的な再公営化された事例で、この補償金の多寡が問題になる場合もあります。






・意見の食い違い(調停・仲裁手続き)

相手の過失を責めて改善を促しても、相手が意見に納得しないことがあります。その場合、第三者に評価してもらうことが重要です。一般的には、まず仲のいい友人、信頼できる親族等に相談します。慰謝料や親権に関わるより深刻な状況であれば、家庭裁判所などを活用することになります。

公共と企業の協議ですが、相互の話し合いで解決することができれば、時間も費用も最も少なくなります。しかしながら、両者が同意できない場合、両者の選定した調停人により仲裁の作業を行います。それでも解決しない場合、協議は裁判所の調停手続きとなることが普通です。国によっては、国際調停となり、海外で実施され、判決まで数年かかることもあります。(みやぎコンセッションでは第一審は仙台地方裁判所と規定しています)

(参考)(9)運営期間中に官民が対立した場合の解決方法


・無駄になる費用(契約破綻による社会的損失)

離婚の障害となるのは、それまでにかかった費用です。結婚紹介所に払った100万円、結婚式に平均360万円程(ゼクシィ、2020)かかっていますが、離婚したらこれが無駄になります。このため、誰でもできるだけ離婚は避けたいと考えます。引っ越しや再就職等、金銭に換算できない労力も増えます。

水道コンセッションでも、運営方法移行に伴う各種費用が、再公営化の心理的な障害となります。事業開始時に、調査・契約作業に数千から数億の費用がかかっています(宮城県では計4億円以上)。一度コンセッションとなった事業を再公営化する場合ですが、一日でも公共サービスを止めることはできないため、事前に職員を採用したり、技術的な引継ぎも発生し、もともと不要であった費用が多く発生します。また、政治的な理由で契約期間中に再公営化された場合、契約違反として補償金がかかる場合もあります。


実質的な結婚生活の破たん?(コンセッションを人質にする企業)

社会的費用や社会的ステータス、子供がいるなど、なかなか離婚に踏み切れない夫婦も多いと思います。きつく注意できないのを良いことに好き放題する相手の場合、離婚していなくても、結婚は失敗だったと言えるのではないでしょうか。

同じことが水道コンセッションにも当てはまります。一度契約され、運営開始されると、水道事業はその地域で競合となる会社が存在せず、独占的なモノポリーとなります。公共としても多額の調査費用を出しており、再公営化に追加的な費用もかかるため、よほどの過失がない限り、契約期間である20~30年の事業が継続することになります。この期間中に企業に有利な契約変更・計画変更が行われることも多く、結果的に企業が不当な利益を手にします。当然、目的とした事業効率化や費用削減ができず、後から評価したら、公共のまま続けていた方が良かったとなる可能性が有ります。

ではどうしたら失敗を防げるのでしょうか・・・



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