2021年2月16日火曜日

(5)水道事業の成果

コンセッション契約の際には、利用者がサービスに満足するように、様々な目標指標を設定し、民間企業にその達成を求めます。

この目標設定が契約上非常に重要ですので、水道事業の成果がどういった指標で測られるのかを少し考えてみましょう。

一般の方々が求める指標としては、以下の様な項目でしょうか。利用者が満足するためには、経済性と安全性(常時、災害時)のバランスが取れていることが必要に感じます。

1)期待される項目
- 水を口に含んだ時に嫌な臭いがしない
- 地震等の災害時に断水しない(または断水期間が短い)
- 理不尽な値上げが実施されない

2)当然満たされる条件
- 充分な水圧で24時間給水される
- 健康を害する様な水が供給されない


専門的に言うと、日本の大都市の水道事業の比較・評価に用いられる、水道事業ガイドラインの事業指標PI(Performance Indicator)を以下に整理します。

2021年時点でPIは全118項目から成り(下表参照)、「安全で良質な水(16項目)」、「安定した水の供給(57項目)」、「健全な経営財務(45項目)」に3項目に分類されています。

「安全で良質な水」水質項目と各施設の運転・整備状況が管理されています。

「安定した水の供給」漏水率や有収率などの事業効率性を示す代表的な指標の他、断水の発生する頻度、環境対応度、及び震災への対応状況が管理されています。日本の指標は地震の多い地域性が考慮され、他国と比べて震災関連の指標が多いことが特徴的です。

「健全な経営財務」企業の財務分析に用いられる一般的な財務指標の他、組織体制や顧客対応度についても指標が管理されています。

これら指標は事業体毎に毎年まとめられ、他事業体と比較されるために総務省へ報告されています。ただし目標値の設定や罰則等はありません。以下に平成30年のデータを載せます。

表 水道事業ガイドライン(JWWA Q100:2016)の概要

目標分類区分項目数,概要
A)安全で良質な水(16項目)運営管理水質管理9項目,消毒のための残留塩素濃度等,水質関連
施設管理5項目,検査や清掃頻度,直結給水割合など
災害対策2項目,水源事故件数など
施設整備施設更新1項目,鉛管の割合
B)安定した水の供給57項目)運営管理施設管理17項目,負荷率,漏水率,有収率,普及率など運営に関する主要な項目
事故災害対策11項目,管路事故頻度,断水時間など
環境対策6項目,電力消費量・CO2排出量など
施設整備施設管理2項目,ダクタイル管率,管路新設率など
施設更新5項目,施設毎の法定耐用年数超過率,更新率など
事故災害対策16項目,施設毎の耐震化率,薬品等備蓄日数など
C) 健全な事業経営45項目)財務健全経営27項目,営業収支比率,料金回収率,給水原価など
組織・人材人材育成7項目,研修時間,資格取得度など
業務委託2項目,検診,浄水場の第3社委託率
お客様とのコミュニケーション情報提供3項目,広報誌・インターネットの整備状況など
意見収集6項目,アンケート実施,苦情対応割合など


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