2021年3月16日火曜日

(9)運営期間中に官民が対立した場合の解決方法

コンセッション契約書には、発注している公的機関と、受注している民間企業が対立した場合の解決方法が記載されています。調停などの手続きと、公的機関またはコンセッショネアによる早期契約終了の条件について記載します。

これらの規定は、予測しない事態が生じたときに非常に重要となります。個別の契約内容について理解しましょう。

(1)調停・仲裁

大規模な工事契約にも同様の規定がありますが、規制機関とコンセッショネアが合意できない事項が発生した場合、まず両者により選定された調停人3名が仲裁し、判断を述べるといった手順が実施されます。さらに両者がこの判断に同意できなかった場合、(指定された国での)調停の手続きに入ります。調停手続きは、判定までに数年の時間、および多大な費用がかかることもあり、その間投資が停滞するといった副作用があるため、できるだけ避ける仕組みの構築が求められます。

(2)公的機関による契約の早期終了

コンセッショネアのサービスに重大な瑕疵(失敗)が発生した場合、公的機関へコンセッション費用が支払われなかった場合、およびコンセッショネアが破綻した場合等の条件において、規制機関は書面で通知し、それでもコンセッショネアによる改善が認められなかった場合、契約を終了させることができる。

(3)コンセッショネアによる契約の早期終了

法的リスクが発現した場合、公的機関が経済損失を補填することとされているが、その補てんが実施されない場合、または水道事業が強制的に再公営化された場合等において、コンセッショネアは書面にて通知後、一定期間後に契約を終了することができるとされている。なお、契約が終了した場合、規制機関は契約において民間が得る予定だった利益、資本、借入等を公的機関が補填することとなっている。


フィリピン国マニラの上下水道コンセッションでは経営危機となった際、(1)の国際調停にもちこまれ、数年間解決しないこととなりました。予測されない事態が起こった際、官民で協議してどう物事を決定・変更していくのかが課題と思います。

ボリビア国ラパス市事例では、大統領の政治的な意図で契約期間中に再公営化されました。このケースは(3)の規定により、多大な保証金を払う義務が生じて問題となっていました。(パリ市の様に、契約期限終了時に再公営化された場合はこの保証金は発生しません)

0 件のコメント:

コメントを投稿