2021年2月14日日曜日

(3)水道公社と民間企業の役割分担

ここでは水道公社と民間企業の役割分担を説明します。
また業務分担と関連が深い、事業運営時のリスク分担についても説明します。






1.役割分担
まずコンセッション契約を委託する水道公社、それに業務を受託する民間企業の役割について以下に概要をまとめます。
下表が一般的にコンセッション契約でそれぞれの役割とされる事項です。

  表 水道局と民間企業(コンセッショネア)の役割分担
 コンセッショネア(民間)公共機関(水道公社、規制機関)
義務事項(1)水質基準を満たした処理水の提供(1)コンセッショネアから提出された運営・管理情報の受領
(2)需要量を満足した処理水の継続的な提供(2)コンセッショネアの運営業務の検査,施設・文書の検査
(3)既存施設の改修と維持管理(資金調達を含む)(3)料金改定に関わる検査と承認
(4)新規施設の建設・改修と維持管理(資金調達を含む)(4)コンセッショネアの許認可取得の支援
(5)上下水道使用料金・接続料金の回収(5)不適切なサービス実施の場合の改善勧告・罰則規定
(6)使用者の問い合わせ・苦情への対応 
(7)サービス実施に関わる許認可の取得 
(8)規制機関へのコンセッションフィー支払い 
(9)規制機関への定期的な技術・財務レポートの提出 

民間企業(コンセッショネア)側の業務ですが、基本的に今まで公的機関が実施してきた水道サービス事業の大部分を実施することとなります。

(1,2):コンセッショネアに十分な水質・水量の処理水の継続的な供給が求められます。
(3, 4):民間企業は基本的に全ての既往・新規施設の建設・改修・維持管理を実施する。過去事例では水源開発や取水施設等の開発・維持管理は水道公社が実施する場合あり。
(5, 6):料金の回収を実施し、問合せや苦情へも対応します。
(7, 8):規制機関に対しては、コンセッションフィーと呼ばれる費用(既往債務返済,運営費等)の支払と、運営情報の報告を実施します。

2.リスク分担

上に記載した一般的なコンセッション契約の条件を元に、契約に関するリスク分担表を以下のとおり作成してみました。
コンセッショネアは水道事業に必要となる全体施設を受け持ち、新規施設の建設と、新規・旧施設の維持管理・補修を実施・管理します。また、料金徴収と資金調達・会計処理を担当し、これらの責任も有します。
公的機関が責任を有するリスクは、料金調整・改定の承認リスク、公的リスク、議会や他市との調整、また民間企業が責任を取ることができない自然災害等に限られます。
自然災害リスクについては、民間企業に予防・対策に関する費用削減の動機付けをするため、一部費用の負担を課す場合もあります。

表 水道局と民間企業(コンセッショネア)の役割分担
想定されるリスク民間利用者コメント
1.需要リスク家庭利用需要変動リスク  需要リスクは民間管理する。
1人当たり水道使用量リスク  
工業利用者変動リスク  
2.原水確保~受水施設原水の水量、水質の確保  水源民間範囲場合責任つ。
原水購入費用増加  
新規開発水源の開発 民間投資実施大規模場合補助金検討
新規開発水源の保全管理 民間管理するが、範囲機関調整
設備の維持管理  民間管理するが、範囲機関調整
3.浄水施設浄水施設等の計画設計 基本的民間管轄し、責任つ。将来投資計画管理する。
施設維持管理、浄水処理、排水・排泥処理  
保守及び修繕工事  
新規浄水場建設 
4.水質検査(末端)水質試験及び試験(必要機器、薬品管理含む)  基本的民間管轄し、責任つ。
水質悪化のリスク  
5.配水施設配水管新設・更新計画策定 基本的に民間が管理。将来の投資計画は公が計画精査する。
配水管管理  基本的に民間が管轄し、責任を持つ。
工事設計・監理  
巡回点検・定期点検  
漏水事故対応  
漏水調査・補修  
水圧不足  
新規地域へのサービス提供遅延(普及低減  
6.給水施設給水管の管理 民間管理
給水管の新規接続・修繕 顧客費用支払
顧客からの苦情対応  民間対応
給水停止(停電を含むけれれない理由  費用負担
給水停止民間企業瑕疵による場合  民間成果指標の1つ。罰則適用あり
8.労務管理コンセッション開始の公務員職員雇用  管理
事業期間中の処遇待遇  契約書雇用条件規定
契約終了時の公務員職員の取り扱い  終了後職員けられる体制をとる
9.施設の移管既存施設の診断と評価 施設情報精緻化必須
既存施設の瑕疵責任  情報管理提供
新規施設の瑕疵責任  民間責任する
10.情報管理既存施設情報整理  管理
資産情報、O&M情報等の取扱  民間管理し、契約
終了時情報提供  
7.料金関連料金設定根拠説明責任(対市)  民間説明
料金設定根拠説明責任(対利用者・議会)  議会等へは実施する
料金改定承認  契約書条件厳守承認されない場合収入源てん。
検針・料金徴収  民間管理
滞納整理  
未払利用者の閉栓・復旧  
11.経済リスクインフレーション(人件費電力薬品工事費  料金調整値上げにまれる
受水費上昇  管理
原水購入の上昇  
契約既往債権返済  
為替変動  民間管理
金融機関からの借入返済  
投資への配当処理  
財務管理・会計報告  
12.許認可・既存契約・水道行政の方向性水道事業認可  手続実施
将来のマスタープラン策定 5料金改定事業計画作成更新内容精査する。
周辺自治体および県との調整、連絡協議  公的機関調整
13.政治リスク議会議決の遅延、および否決  基本的損失負担する
市民への説明責任、情報公開対応 
事業に直接的に関わる法制度変更  
事業に直接的に関わらない法制度変更  一般的法律変更については民間責任
14.不可抗力(地震・天災・渇水・テロ行為・その他外部侵入者によるもの)不可抗力(その他外部侵入者除く)による施設損壊 損傷費用補修動機づけのために民間一部負担
不可抗力時(その他外部侵入者除く)の給配水対応 
不可抗力時(その他外部侵入者除く)による料金徴収の不能 基本民間がリスクを保有する。一定以上負担検討
その他外部侵入者によるもの  民間管理


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