2021年3月21日日曜日

(1)水道民営化に関する世界銀行の反省と方向転換


水道民営化は、1990年頃から世界銀行やIMFの提言に従って進められてきた経緯があります。ここでは過去の世界銀行の政策転換について記載してみます。

・コンセッション契約の黎明期(1990~)

私が大学を卒業して働き始めた1990年後半は、世界銀行やIMFが世界中でコンセッション契約導入を薦めていた時期です。民間が建設維持管理を実施すれば、事業が効率化し、料金が下がり、また建設に必要な資金も確保できると考えていたためです。フィリピンのマニラ(1997)やインドネシアのジャカルタ(1998)が第一弾といった時期ですね。知識の無い私は、単純に民間運営がこれからの潮流なのかな・・・と考えていました。

・失敗事例の続出(2000~)

しかし事業が始まってみると、ボリビアの水紛争が起こり(1999-2000)、世界中(アジア・中南米・アフリカ)で導入後の失敗例が散見されていきました。料金が想定していたほど下がらず、建設投資も計画どおり進まず、場所によっては契約破綻が発生しました。NGOは特に契約の透明性が低いことや、貧困層が裨益を受けていないことを理由に、水道民営化・コンセッションを強く批判しました。

・結果分析と方向転換(2010-)

これら事業の成果をを分析し、作成されたのが以下のレポートで、書評を作成しましたのでリンクを読んでください。

都市水道事業の官民連携の書評(和訳2012年、オリジナルは2009年)

世界の主要な水道PPP事例64件(うちコンセッション36件)の結果分析の結果、民間が関与する範囲の大きいコンセッションが必ずしも水道事業で最適なスキームではないとの明確な判断がされています。

仕事で色々な国のインフラ開発に携わっているため、世界銀行が電力分野などで引き続き民間参入を進めていることを目にします。しかしながら、水道事業に対し、民営化・コンセッションを無理に薦めることは無くなっています。

世銀の政策に限らず、先進国・途上国のメディアの論調でも、民間参入のデメリットについて知識が共有されつつあるイメージであり、国内でも同様の情報共有が必要と思います。

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