2021年3月29日月曜日

(1)愛知県道路公社の道路コンセッション(2016年)

ここでは2016年に開始された、愛知の道路コンセッションの概要をとりまとめます。

国内の道路分野のコンセッション事例はこの1件のみです。この事業は、需要リスクがうまく緩和され、また民間企業の知見で需要創出が実施されており、成功事例とされています。

主な特徴は以下のとおりです。

(1)バンドリングによる案件形成(規模の経済)
(2)
民間の需要リスク緩和と利益の配分(公社、民間、利用者)
(3)民間の知見を利用した
関連業務改善


経緯

2012年~:事業の検討開始。
2015年:実施方針公表、マーケットサウンディング、募集要項公表
2016年:優先交渉権者の選定。5グループが1次審査を通過し、そのうち2グループが2次審査に応札。選定は200点中、技術点120点、価格点80点(運営権対価1,377億円、試算額の+13%)で評価され、前田建設グループが選定された。その後、30年の実施契約締結。
2017~19年収入増による恩恵を、民間・道路公社で配分(2017年民間+6%、公社+8%、2018年民間+6%、公社+5%)
2020年:コロナの影響で大幅な収入減。当初の想定収入額-6%を下回る分を道路公社が民間に補填。

(1)バンドリングによる案件形成(規模の経済)

図 愛知道路コンセッションの対象8ルート

この事業は、図の8ルート(合計72.5km)をまとめて契約されました。バンドリング(Bundling)と呼ばれる、PPP事業ではよくある方式で、複数の事業をまとめることで規模の経済による効率化を目指しています。水道事業でも、コンセッション導入と併せて広域化(規模の経済)が実施される傾向が強いです。

応札の評価は、技術点(120点)と財務点(80点)が6:4となっており、事業改善と収益増の提案がバランスよく評価されている印象です。

(2)民間の需要リスク緩和と利益の配分(公社、民間、利用者)

道路のPPP事業では、需要リスクが最も収益性に影響を与えます。本事業では毎年の予測収入額の+ー6%分は民間がリスクを負い、+6%以上は公社へ収益分配、-6%以下は公社から収入が補填される方式でした。業務開始後、民間企業の努力(イベント実施、パーキングエリア改善等)により、需要が上回り、民間・公社で利益が配分されました。一方、2020年からはコロナ禍により需要が減り、公社から収入補填されるとの情報がありました。

この経緯を見ると、民間はリスク緩和により安定した運営を行うことができました。また、事業効率化・サービス改善の恩恵を公社、民間、利用者がバランスよく享受できており、適切な設定だったと思います。水道事業でも、事業効率化の恩恵を、公社(経費削減)、民間(利益獲得)、住民(水道料金低減)がバランスよく享受するスキーム設定が必須です。

(3)民間の知見を利用した関連業務改善

現地を見ていませんが、資料によると、民間企業(コンセッショネア)がサービスエリアのレストランやショップスペースの賃貸と維持管理を実施しています。更に、外資系ホテルやバイオガス事業の招致が計画されているとのことで、これらは民間の知見を活用した業務改善の試みとされています。水道事業では不随するビジネスが限られており、業務改善の効果も限定的です。

参考リンク
愛知道路コンセッション株式会社(コンセッショネア)

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