2021年4月6日火曜日

(2)浜松市の下水道コンセッション(2018)

ここでは2018年に開始された、浜松の下水道コンセッションの概要をとりまとめます。

国内の下水道分野のコンセッション事例は今のところ、この1件のみです。

このコンセッションの主な特徴は以下のとおりです。

(1)民間の業務は限定的
(2)入札は価格点(運営権対価額)の影響も大きい総合評価方式
(3)運営権対価の1/4を初期払いとし、企業の途中退場を防ぐ


経緯

2011年~:事業の検討(2地区(舘山寺・湖東)を対象)
2013年~:事業の検討(西遠流域下水道を対象)
2015年:実施方針公表、マーケットサウンディング
2016年:募集要項公表、参加資格審査(2グループが選定される)
2017年:優先交渉権者の選定。ヴェオリアグループと日立グループが応札。企業選定は総合評価方式。
2018年:事業開始。20年の実施契約締結。
2019-21年:これまでのところ運営に問題はなさそうです。民間事業者のサイトに豊富なモニタリング結果が開示されています


(1)民間の業務は限定的

本コンセッション事業で民間の業務とされているのは、下図の西遠処理区の西遠浄化センター+2ポンプ場の維持管理です。敷設・更新費用の予測が難しい下水管は対象外であり、民間は埋設管の老朽化に関するリスクを有していません。

また民間の建設費、更新費の負担は全体の1/10とされています。下水道は上水道と異なり政府補助が得られ、市債で賄うことも許されているため、これらを考慮し民間の負担額が小さくなっています。

従って、一般的な維持管理契約との差異はそれほど大きくない印象です。大きな違いは、収入が下水道料金の23.8%と規定されているため、民間が収入リスクを負っていること、それと契約期間が20年に伸びたことでしょうか。

図 事業の対象施設(浜松市資料より)


(2)入札の審査は価格点(運営権対価額)の影響も大きい総合評価方式

入札選定は200点中、技術点160点、価格点40点の総合評価でした。技術点は安全性・地域の活性化・管理手法などが評価されています。価格点の割合(2割)だけ見ると影響が小さい印象ですが、評価結果(200点満点)を見ると、ヴェオリアグループ(148点)と日立グループ(111点)の差分は37点であり、そのうち価格点の差分が20点以上を占めています。従い、最終結果から見ると価格評価の影響が大きいことが分かります。

(評価結果から逆算すると、応札で提示された運営権対価額は、ヴェオリアグループが25億円、日立グループはおおよそその半額となります)

上水道事業では安全性がより重視されますが、下水道事業の健康被害は稀であり、価格(VGFや対価)重視という判断はもっともだと思います。


(3)運営権対価の1/4を初期払いとし、企業の途中退場を防ぐ

上で、運営権対価の金額の評価が大きいと書きましたが、その支払いは当初に全体の1/4を払い、残りの20年間で3/4を払う計画とされています。公表資料によると、早めに支出させることで企業の途中撤退を防いでいるとされています。

しかし企業から見ると、余分なお金を先に支払うことで財務状況が悪化しており、その分は費用が増加しているはずです。この条件設定によりどれほど撤退を阻止する効果があるのか分からないため、個人的に、この条件の可否については判断がつきません。

図 運営権対価の支払時期(公表資料より)









浜松市では下水道コンセッションは問題なく実施されたものの、続いて検討された上水道のコンセッションについては反対が強く、実施が断念されたそうです。直接飲用する上水道は、市民の方々が充分に納得しないと実施は難しいということが分かります。

参考リンク

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