令和元年の営業費用(損益計算書から)
水道事業にかかる毎年の費用を知るため、東京都の損益計算書の営業費用を見てみましょう。
- 減価償却費(平均化した建設費)763億円
- 施設別費用 1,792億円(原水費146億、浄水費267億、配水費1,175億、給水費204億)
令和元年の営業費用は合計で3,041億円、建設費を表す減価償却費は763億円(営業費用の約25%)でした。施設別に計上された費用(人件費、薬品費、電力費など)は、配管施設の維持管理費用である配水費が1,175億円と高額でした。
全部で1360万人に給水しているため、人口1人あたりで見ると、営業費用は22,400円/年であり、基本的に水道料金でこの費用が賄われます。そのうち、減価償却費(建設費)は5,600円/年となりました。
令和元年の固定資産(貸借対照表から)
・うち構築物(水道施設ですね) 1.58兆円
令和元年当時の水道施設、建物、土地等を含む有形固定資産は合計で2.44兆円、そのうち水道施設を示す構造物は1.58兆円でした。数字が大きくて想像が難しいですが、1人あたりで計算すると、有形固定資産額は179,300円、構造物資産額は115,900円となります。(1人当たりの有形固定資産額は、10-20万円程度となることが多い)
水道事業の費用の特徴
上の資料でも確認できた、水道事業の費用の特徴を以下に整理します。
a)大規模な設備投資が必要
水道事業の施設は高額の設備投資が必要となります。東京都の場合、水道施設の資産額は1人当たり約12万円ですので、5人家族であれば60万円の施設となります。水道施設は、水源からの取水、浄化、送配水、配水管網での各戸給水と大規模で一貫したシステムを構築する必要があり、昔は公共事業として施設建設が進められたわけですね。
コンセッション契約が実施された後、同規模の施設建設は難しく、競合企業は現れないため、契約した企業がその地域の独占企業となるわけです。
b)運営時にも連続的な配管投資が必要
最初に大規模投資が必要なことはわかってもらえたと思いますが、さらに重要なことは、建設費用が継続的にかかることです。理由は、建設費の約6割を配管工事費が占めており、30-40年といったスパンで入れ替え・更新が必要となるためです。
「配管費用が6割」の根拠ですが、厚生省の資料1によると、過去の施設建設費の内訳は、取水施設(貯水・取水・導水)が15.5%、浄水施設が12.5%、送水施設が11.2%、配水施設が50.8%、その他(建物等)が10.0%です。主に配管施設からなる送水施設と排水施設の割合が約6割です。
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