2021年3月1日月曜日

(6)水道事業のPPP方式の比較


ここでは、水道事業に適用される主なPPPスキームの概要と各スキームの役割分担を説明します。PPPスキームの呼び方・定義・条件等は、国によって異なることも多いですが、世界銀行の定義に従いました。また、比較的実施例の多い、新規水源開発(バルクウォーターサプライ)などの一部新設事業は除いて記載します。

1.4つのスキームの概要

スキームは、(1)完全民営化、(2)コンセッション契約、(3)アフェルマージュ(リース)契約、(4)マネジメント契約、の4種類に分類しました。下表に概要を示します。

この表では、上の欄がより民間参入の度合いが高く、下になるにつれ公的機関の役割が増えています。契約期間は民間参画度合いが高いほど、長期となっています。

※このHPのタイトルは通称の「民営化」としましたが、水道法改正により適用されるスキームは厳密には「コンセッション」となるので、その違いも確認してみてください。

表 水道事業に適用される一般的なPPPスキーム

PPP方式資産保有者維持管理期間における施設投資ファイナンス運転・維持管理O&M)事業収入一般的な契約期間
(1) 完全民営化民間民間民間民間民間による料金徴収制限無し
(2)  コンセッション契約公共機関/民間(新設部分のみ)民間民間民間民間による料金徴収約25 - 30年
(3)  アフェルマージュ(リース)契約公共機関/民間(更新部分のみ)公共機関公共機関民間民間による料金徴収約10 - 15年
(4)  マネジメント契約公共機関公共機関公共機関民間官からのサービス料支払約3 - 5年

注:一般的な条件で整理しましたが、スキームの定義は分野や国で異なることが多く、すべてが上の条件に合致するわけではありません

2.スキームごとの説明

(1)完全民営化」

各種計画、施設投資、ファイナンス、維持管理、料金回収を含む、全ての業務が無期限で民間企業の責任となります。資産も民間会社が保有します。本方式はイギリスで採用され、全国に有った水道事業は約20の会社に集約されています。

(2)コンセッション契約」

事業体と民間企業が約25~30年に渡る契約を結び、民間が施設投資、ファイナンス、維持管理、料金徴収業務といった幅広い業務を実施しています。公的機関は資産を保有し、民間企業の運営状況を管理、規制する役割を持ります。契約期間が長く、民間企業はその間の投資活動も実施することとされています。

(3)アフェルマージュ(リース)契約

10~15年に渡り、事業体が民間企業に運転維持管理を委託する形式です。大規模な施設投資の資金調達と実施は公的機関の義務となっており、既存施設の補修や維持管理、料金徴収のみ民間企業が実施します。公的機関が投資を実施するため、国際機関等からの利子の低い借款を受け入れ、低い財務費用で投資を実施できる利点があります。一方、機関の実施能力が低い場合、投資が遅延する恐れも有ります。

(4)マネジメント契約」

浄水場やポンプ場等の限られた施設の維持管理を、3~5年契約で民間企業に委託する形式です。契約自体は他のスキームと比べて簡便であり、日本国内でも3者委託等として実施されている。

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