2021年3月14日日曜日

(8)コンセッション契約の課題と規制機関の重要性

ここではコンセッション事業における規制の重要性について説明します

まず、民間企業がコンセッション契約で事業運営する場合に生じやすい課題点を示します。その後、それを規制・管理するための方法を、他国の事例に基づいて説明します。

(1)コンセッション契約の問題点

以下はコンセッション契約で生じる代表的な課題です。どれも、結果的に投資額が計画を下回り、社会的な損失につながります。

モラルハザード:契約後、業務実施の過程で情報が民間企業に独占され(情報の非対称性と呼ばれる)、そのために規制機関は充分な管理が実施できず、民間企業の業務が怠慢化する(投資の遅延など)、モラルハザードが生じる恐れがあります。

ホールドアップ:業務が問題なく計画通りに実施された場合、その後規制機関による利益率の厳格化、報酬の低減といった締め付けがあることを予想し、民間企業が意図的に設備投資を控える戦略をホールドアップと呼びます。

低価格入札(low balling)と再交渉:過去発生件数が多い事例です。競争入札の基準を最低価格の水道料金を提示した企業としていた事例が多かったため、まず低い料金を入札し、権利を得たのちに契約を交わし、その後の運営期間中に目標が達成できない理由を並べ、再交渉を通じて条件(料金、投資額など)を緩和させていく戦略です。水道事業はモノポリー状態であり、生活に必要な水を人質に取られて交渉されるため、規制機関も厳しい管理ができないことが多く、問題になりました。


(2)規制の方法

上の様な状況が発生しないため、能力のある規制機関が適切な契約締結と業務管理をしていく必要があります。

企業は利益追求のために活動するため、社会的に正しい行動に経済的妥当性を持たせることが必要です。このため、契約書に罰則や報酬などの規定が盛り込まれ、運営期間においても企業が違反や手抜きをしていないかモニタリングしていく必要があります。私が他国の事例で確認したことのある、罰則や報酬を以下に記載します。

・給水停止に対する罰則

自然災害、緊急事態等を除く、コンセッショネアの瑕疵により給水停止が発生した場合、「給水停止中に消費されなかった水量」×「一定額」の罰金を支払う。

・水質悪化、施設故障に対する罰則

コンセッショネアの瑕疵で水道事業の水質低下、施設故障等が生じた場合、規制機関が独自の対応を実施でき、その費用をコンセッショネアが負担する。

・過少投資に対する罰則

コンセッショネアの実施すべき設備投資(配管敷設・更新・エリア拡張)が実施されない場合、公的機関が代わりに業務を実施でき、その費用を民間企業が負担する。

・漏水率改善・悪化に対する報酬・罰則

成果指標(例えば漏水量)が計画値より+3%以上改善された場合、一定額の料金値上げによる収入増を認める(報酬)。逆に計画された値より-3%以上悪化した場合、料金値下げにより収入を一定額減額する。 

・契約終了などの規定

業務が計画どおりに進まない場合、規制機関が企業に改善命令を出し、それでも満足されない場合、契約終了できるとの規定もあります。



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