2021年5月17日月曜日

(3)仙台空港のコンセッション(2016年)

空港分野はコンセッション事業の事例が多く、2019年末時点で17空港が実施されています(北海道のバンドリングされた空港含む)。

ここでは2016年に運営が開始された、仙台空港のコンセッションについて概要を説明します。

仙台空港は比較的収益性が高く、早い時期に事業が始まり、SPCの選定は利用者増加や地域発展の視点が重視されました。直近ではCOVID-19の影響も受けており、その場合の対応や国との損失補填の方法など、別の分野でも参考になりそうです。

本事業の主な特徴は以下の通りです。

(1)航空系事業(赤字)と非航空系事業(黒字)を合わせて収益化
(2)落札者選定は対価金額よりも提案内容重視
(3)不可抗力リスクは国が負担







経緯

2014年:仙台空港の実施方針公表、特定事業の選定、募集要項の公表
2015年:第一次審査書類提出・評価、競争的対話、第二次審査書類提出、優先交渉権者選定
2016年:ビル施設等事業開始、滑走路等の維持管理、着陸料の収受等事業引継ぎ


(1)航空系事業(赤字)と非航空系事業(黒字)を合わせて収益化

空港事業は、航空系事業(滑走路、エプロンなどの管理)と非航空系事業(ターミナルビル、駐車場など)に分かれ、別々に運営されてきました。資料1によると、仙台空港のEBITAは、前者がー4.5億円、後者が+11.5億円でした(2014年)。

コンセッション事業ではこれらを全てをSPCが運営・管理し、全体で黒字化されます。また着陸料などの金額を調整する権利も与えられ、全体として収益性を最適化することができます。料金の最適化により、「着陸料の引き下げ→路線数増加→収益性増」といったサイクルが期待できるとのこと。一方、需要リスクはSPCが負うことになります。

運営開始後の利用者数ですが、2016年316万人、17年343万人、18年369万人、19年376万人と漸増しており、当初の目的は達成されている様です。

なおコンセッションの期間は30年間とされ、SPCの希望により、1回限りの追加30年以内の延長オプションが認められています。

水道事業と比べると、SPCの工夫(LCC誘致、イベント実施等)により、収益拡大できる点が空港分野コンセッションの魅力と感じます。











(2)落札者選定は対価金額よりも提案内容重視

運営会社の選定は、2段階に分けて実施されました。

第一次審査は三菱商事、東京急行電鉄、三菱地所、イオンモールを代表企業とする4つの企業グループが提案し審査を通過。第二次審査はを三菱商事を代表企業とするグループを除く3グループが提案。

最終的な審査基準は200点満点で、運営権対価はそのうち24点(12%)でした。それ以外の得点は、大きい項目から空港活性化(35.5%)、事業継続・実施体制(16%)、設備投資計画(12%)、実施計画(8%)、安全性(7.5%)、全体事業方針(5%)、職員の扱い(4%)とされています。従い、国の受け取り金額ではなく、地域活性化や実施体制が重視された審査となっており、結果的に東京急行電鉄グループが選定されました。

判断基準を見ても、費用削減よりも利用者増加・地域発展が目的とされています。


(3)不可抗力リスクは国が負担

事業のリスク配分ですが、需要リスクを含む基本的な事業・運営のリスクはSPCが負います。それ以外の、不可抗力リスク、特定法令等変更リスクなどは国が負うこととされています。

空港分野の災害事故ですが、2018年に関西空港で台風21号により橋脚が破壊される事故が発生し、利用者に大きな影響がありました。

また2020年から21年にかけて、航空業界はCOVID-19の影響を強く受けており、仙台空港の2020年の利用者数は、411万人(計画)から121万人(実績)に大幅に減少しています。
これら災害による損失は国が負担することが原則となっており、その手続きや対応方法について、公平な判断が重要です。

空港分野の事業は、転載の影響を大きく受けており、災害時の対応方法、国からの損失補填の判断基準など、今後教訓が多く得られるのではないかと思います。






参考リンク
仙台空港特定運営事業(国土交通省)
資料1:コンセッション方式を活用した空港事業の民営化(三井住友トラスト基礎研究所、2016年)

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