2023年3月7日火曜日

(2)施設の老朽化と更新費増加

 現在の水道事業の課題の1つは、施設の老朽化と更新費の増加です。

「水道事業の現状と課題(平成30年度、総務省)」に水道事業の投資実績が整理されています。この資料によると、1970~2005年頃まで(35年間)の年間設備投資額は1.2~1.9兆円/年程度で推移しています(図1参照)。最大値は1998年(H10)の約1.9兆円です。

配管設備の耐用年数は、一般的に50年と言われています。投資が増加したのは1975年頃で今から48年前ですので、これから多くの施設が寿命を迎え、破損等の事故が増えると思われます。



出典:「水道事業の現状と課題(平成30年度、総務省)」21ページ
図1.過去の水道事業の投資実績

老朽化した施設は、更新していく必要が有ります。仮に耐用年数超の施設を全て更新した場合、年間1.3兆円~1.9兆円の更新費が必要となり、1人当りの負担は年間11,000~16,000円/人です(人口1.2億人で計算)。東京都の1人当り年間水道料金は、約10,000~15,000円/人なので、収入が全て施設更新費で無くなってしまうレベルですね。


同じ資料に、管路の更新率の推移(図2)が示されているので見てみましょう。耐用年数50年で考えると、理想的な更新率は2.0%となりますが、2016年(H28)で0.75%しか有りません。しかも、老朽化する管路が増える中、この率は減少傾向にあります。つまり、老朽化した施設が増えているが、十分に更新が進められていない現状が分かります。


出典:「水道事業の現状と課題(平成30年度、総務省)」24ページ
図2.管路経年化率・管路更新率の推移

施設老朽化が進むけれど、更新費用の負担も大きく、十分に更新できていない状況が分かりました。国内の水道事業は、人口減の影響で今後も収入減が予想されており、どうやって現在の安全性と品質の高いサービスを維持していくかが大きな課題となっています。

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