(4)宮城県の上下水道コンセッションー前編(2022年)の続きです。
前編では事業概要や契約形態について述べましたが、ここでは企業選定の方法とモニタリング方法、個人的な意見を記載します。
5.企業の選定方法
企業の選定方法ですが、詳しく各種資料を見ると、県は「費用削減は県が試算した程度(現状と比べて約10%)で良く、その制約の中でできるだけ高度で安全なサービスを提案して欲しい」という依頼をしています。
企業選定の配点方法は以下の図のとおりです。合計200点のうち、配点の高い項目順に並べました。県の説明資料では、費用削減の効果が大きく述べられていますが、判断基準としては3番目で、配点は20%分となります。
2)改築・修繕等:42点、21%
3)運営権者提案額:40点、20%
5)全体事業方針・実施体制等:30点、15%
6)地域貢献:10点、5%
6.モニタリング方法
7.個人的な感想
これまで整理した内容を受け、個人的な感想を書きます。
1)安全性を重視した契約形態
みやぎ上下水道コンセッションは、アフェルマージュ契約に近く、過去事例で問題の大きかった配管投資を県の役割とし、事業リスクを減らしています。業者選定基準も、費用削減より運営管理・安全性確保を重視しています。
個人的に、国内では水道事業に費用削減よりも安全確保を求める利用者が多いと推測するため、採用された契約形態・評価方法は良く練られた内容と感じています。
2)市民への説明不足
一方、水道コンセッション導入に関する、県から市民への説明は不十分であったと感じます。命の水を守る市民ネットワーク・みやぎは、事業検討時の住民説明会の回数や参加者の少なさを指摘しています。また、県が作成した説明資料は費用削減が大々的に謳われていますが、実際の企業選定では費用削減よりも運営管理や安全確保が重視されています。アフェルマージュに近く、一般的なコンセッションと異なる契約形態も十分に説明されていない印象です。
国内初の水道コンセッションであり、住民説明が難しかったことは容易に想像できますが、市民が十分に理解・納得していない状況で、将来的に問題が起こった場合、政治的な混乱を招き、事業が失敗に終わる可能性が残ります。
3)批判的な分析・チェックを行う重要性
最後に、県が設定した本事業のモニタリング・規制方法は一般的な仕組みです。注目するべき点は、その仕組みの外で市民団体が活躍し、市民の立場で批判的な指摘をしていることです。
県・公的機関は、これら反対する市民団体を排除するのではなく、社会的に有益な組織・活動として支援する仕組みを作り、共存していく体制を整えることが大切ではないでしょうか。水道事業に限らず、多くの公共事業で理想的な有るべき姿と考えます。
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