2023年4月10日月曜日

(4)宮城県の上下水道コンセッションー前編(2022年)

2022年4月から始まった、宮城県の上下水道コンセッションについて記載してみます。
正式な事業名は、「宮城県上工下水一体官民連携運営事業」です。
(図は宮城県作成の資料から抜粋しています)

まず、経緯、事業費用、事業概要、契約スキームを整理しました。
企業の選定方法、モニタリング方法、個人的な感想は次の回に記載予定です。

1.経緯

2014-2015:事業検討
2016-2017:検討会の開催、事業スキーム決定
2018:県の導入調整会議
2019-20:事業制度を検討、特定事業の選定、募集要項公表
2021:事業者選定(メタウォーターグループ)
2022:4月より「株式会社みずむすびマネジメントみやぎ」が運営開始

2.事業費用

以下、20年間の事業費総額と民間企業への発注金額です。
事業費総額:3,314億円
民間企業への発注金額:1,563億円(全体の47%、年78億円程度)
費用削減額(推計):-337億円(県運営の削減分50億円も含む)

3.事業概要

対象事業:複数事業をバンドリング
2つの水道用水供給事業、3つの工業用水道事業、4つの流域下水道事業をまとめて発注しています。
それぞれの規模ですが、契約書(案)に記載の水量(合計225,061㎥/年、令和4年)で見ると、水道用水供給事業が48%、工業用水道事業が14%、流域下水道事業が38%の割合となります。
複数の事業をまとめて発注することはバンドリング(Bundling)と呼ばれ、愛知県の道路コンセッションや、北海道の空港コンセッションでも用いられる手法です。
対象地域が重複する事業を選び、業務効率化により運営費用削減を目指したとのこと。

図1 事業区域

4.契約スキーム

事業形態はコンセッションとなっていますが、一般的なコンセッション契約と異なる特徴的な点を記載します。

(1)フランスのアフェルマージュ契約に近い条件(配管更新は公が実施)

県と民間企業の役割分担を、県の説明資料で示します。
水道用水供給事業は水源から浄水場まで。工業用水道事業は水源、浄水場、企業までの配管、流域下水道事業は下水処理場と放流です。

配管施設の多い青丸部分(追記)は対象となっていないことが分かります。

図2 事業別の対象施設(県資料に青丸を追記)

調査レポート(平成30年)でも、配管更新部分は県が実施することが明記されています(青丸を追記)。

表1 施設別の役割分担(県資料に青丸を追記)

一般的な水道のコンセッション事業では、浄水場や設備更新に加え、配管施設の管理・更新も民間企業が実施するため、宮城県の方式は、配管施設の管理・更新を公が実施する点が、本事業の特徴です。
水道事業の設備投資は約6割が配管に費やされますが、それを宮城県が実施するわけです。
従って、全体事業費を見ると、合計3,314億円のうち1,563億円(47%)分が民間の負担費用で、残りの1,751奥園(53%)は県の負担となり、県の役割が大きいことが分かります。

配管の更新を公が実施する形態は、フランスのアフェルマージュのスキームに近いものです。
水道事業の官民連携事業の中で、アフェルマージュは失敗事例が少ないことが知られていることから、リスクを抑えた契約形態と言えます。

アフェルマージュの契約形態については、以下を参照ください。


(2)料金徴収方法は企業から県に委託

通常のコンセッション事業では、民間企業が利用者から料金を徴収します。
本事業では、契約上は民間企業の役割としつつ、県に料金徴収を委託する形態を採用しており、この形態も特徴的です。
契約書(案)によると、委託費用は年288,000円で、契約額に比べると小さい金額です。

普通のコンセッションでは、民間企業がまず料金を収集するため、罰金等を徴収しにくいとの指摘が有ります。
本事業では県が料金を収集し、罰金等を天引きして民間企業に報酬を支払う形態となっており、比較的企業の運営を規制しやすい形態と言えます。

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