2021年4月21日水曜日

(7)セネガル、ダカールの水道アフェルマージュ

ここでは私が現地調査した、西アフリカ、セネガルのアフェルマージュ契約について説明します。

(1)民間が投資義務を有しないアフェルマージュ方式を採用
(2)26年間のアフェルマージュ期間中重大な契約違反等発生せず、業務水準も改善

アフェルマージュ方式は、配管や水源開発は公が実施しており、投資に関わる財務費用が減少します。民間企業から見ると事業リスクが低下し、その結果契約条件に関わる官民の紛争事例も少ないです。

これらの利点から、国内でも活用を検討する価値があると思います。


経緯

1980年代: 西アフリカ諸国で水道事業のPPP導入が進む
~1996年: 水道事業はSONEES(水道公社)が実施。投資・管理不足で低いサービス水準
1996年: 政府は民間の実施範囲の大きいコンセッションを希望せず、アフェルマージュ方式を採用。SONES(規制機関)設立。SDE(Senegalese des Eaux、仏Saur系)社がアフェルマージュ業務開始(当初10年間)。下水道業務はONAS(公社)に移管。
1996~2019年: 10回のアフェルマージュ契約変更・延長により、SDEが26年間業務実施。業務水準は計画に近く改善し、水道民活事業の成功事例とされた。
2019年~: 再入札が実施され、アフェルマージュ実施企業がSDEよりSENEAU(仏スエズ系)に交代。


(1)民間は大規模投資義務を有しないアフェルマージュ方式を採用

セネガルでは1996年にPPP(官民連携)事業が開始されましたが、公共機関が資産保持する体制を政府が望んだため、完全民営化やコンセッション方式ではなく、アフェルマージュ方式が採用されました。

アフェルマージュの契約概要は「(6)水道事業のPPP方式の比較」で説明していますので参考にしてください。

2015年時点の契約内容は以下のとおりです。(契約変更で当初案より修正あり)

・MHA(水利・衛星省)、SONES(規制機関)、SDE(民間)1996年にアフェルマージュ契約を締結し、その後修正と延長により業務は2019年まで継続

SDEは料金徴収を含む運営維持管理、および一部の更新建設(1年間当り、100mm配管更新60km分、メーター交換20,000個、6,000戸接続)を実施。既存配管は合計約6000kmですので、60km分は%程度の非常に少ない割合です。

SONESが国際機関などからの資金を活用し、大規模投資(水源開発、施設拡張)を実施。一部、計画通り施設建設が実施されない事例も発生。

・SDEの報酬額は水道料金(約100円/㎥)の70-75%程度で、残りはSONESに返還。報酬額は徴収水量に比例(コンセッションの様に合計収入額ではない)。毎年、電気代・人件費などの物価上昇率が反映される。


(2)業務指標を見ると、比較的計画どおり業務内容が改善した

参考資料(JICA、2015)のデータでは、給水率や無収水率などの主要な事業指標が以下のとおり改善しています。

・給水率:70.3%(1996)→ 98.7%(2013)うち各戸接続88.5%
・浄水量:98.5 百万㎥(1996)→ 164.9 百万㎥(2014)
・無収水率:29.2%(1996)→ 20.2%(2014)

給水率が100%に近づいていますが、SDEの報酬が水量に比例しているため、貧困地域への給水拡大も嫌がらずに実施される仕組みとなっています。

アフェルマージュにより、民間の投資リスクが抑えられ、重大な官民間の係争は発生しませんでした。公社が大規模投資を管理していますが、アフリカ開銀などから金利の低い融資を調達でき、財務費用を低く抑えられたことも成功の理由と言われています。

長期間SDE社に業務委託している点に疑問が出され、競争入札が実施された結果、2019年からスエズ系のSENEAU社に業務が移管されました。

(写真:セネガル相撲をする子供たち、一部残る井戸利用)


参考資料

0 件のコメント:

コメントを投稿